経済的なマスクを着けて引き裂かれた約束の網を乗り越えよう

経済的なマスクを着けて引き裂かれた約束の網を乗り越えよう

新型コロナウイルス蔓延による緊急事態宣言の中ですが、コロンビア大学のペニー・メーリングの言う「経済的距離を取るための経済的マスク」の必要性と具体策について書いてみました。

前回の弊社ブログで約束遵守が経済を支えており、その為に返済可能額を高めながら妥当な範囲での借り入れが重要と書きました。ただし、現在のショックの中では通常時の原則的な考えを少し超えた対応が必要になっています。

切り裂かれた約束の網

昨日17日土曜日に放送されたNHK特番「コロナ危機 グローバル経済 複雑性への挑戦」で、コロンビア大学のペニー・メーリングの発言に深く共感しました。

ペニーメーリングは、今回の経済的ショックによって、負債や支払いやその他あらゆる「私たちを結びつけている網のような約束の複雑さが明らかになり」、それが「切り裂かれた」と言っています。

ショックが起きる前の、約束の網が経済活動を支えている通常時では、原則的な範囲での対応というあくまで原則論になりますが、ショック後の「約束の網が切り裂かれた」現状では、平常時の考え方で乗り越えることは難しい状況です。

経済的距離を取るための経済的マスクとしての損失補填や返済期限延長

では、通常時を超えた対応や考え方は何かということですが、前述のNHK特番でペニー・メーリングは、以下の内容を発言していました。

ペニー・メーリングは、「経済的な存続に必要なものとして経済的な距離が必要」と述べ、経済的な距離を「ウイルスによる経済的な影響が人から人へと拡散しないように政府が私たちそれぞれのバランスシートの間でマスク的な役割を果たすこと」と定義して「経済的マスク」という考えを提唱していました。

そして、その例として、「損失の補填や借金の返済期限を延期させる」ことを挙げています。そして、政府の役割を「短期的には失われた所得を補填し数か月間人々が離れ離れになった後でも元に戻れるように払えない借金が、その後も急増しないよう可能な限り 返済期限を先に延ばす事」として、財政的な措置の必要性について話していました。

加えて、「「減税する」とか「財政支出する」とか「金利を動かす」といった通常の対策ではありません」として、「景気循環させるためのものではない」と言っています。

経済的マスクとしての支援策(損失補填や返済期限延長策)

今回のコロナウイルスの影響期間が読めず、中長期での収束が見えていません。約束の網が切り裂かれ、収束後に元の売上高に戻る時期が見えない中では、いかに時間を稼ぎ、資金支出を減らすかが重要です。

短期的な負担を給付金活用などにより穴埋めしながら、中長期的には据え置き期間活用した借入や負債の納付延滞を活用しながら、負債支払いを延長して、経済的な距離を取る経済的マスクを最大限に活用していくことが必要な時期であると思います。

その具体策を日本政府の支援施策の中で見てみました。

持続化給付金含む損失補填策

政府の支援策として①持続化給付金により、中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事 業者等、その他各種法人等で、新型コロナウイルス感染症の影響 により、売上が前年同月比で50%以上減少している者 に対して、売上(事業収入) — (前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月) ※上記の算出方法により、 法人は200万円以内、個人事業者等は100万円以内を支給されることを掲げています。

※政府の資産策冊子から参照

他にも②雇用調整助成金の特例などもこれに該当すると思います。

据置期間の最大限の活用した借入

政府の日本政策金融公庫による、①コロナ特別融資や②保証協会セーフティネット4号も長い据置期間設定が掲げられています。①は最大5年、②は2年。

また、各都道府県の制度融資でも、長い据置期間が設定されています。③商工中金の特別融資も据え置き期間が最大で5年を掲げています。

借入金のリスケジュールや借換

今回の支援策の中で、中小企業再生支援協議会が窓口になり実施する①「新型コロナ特例リスケジュール」や、②政府系金融機関に対する「金融機関等への配慮要請」の内容の②として、返済猶予等の既往債務の条件変更 について掲げています。債務の借り換えについても掲げられています。

税金や社会保険料等の滞納や軽減

経済産業省の支援策冊子を見ても、①「納税の猶予の特例」②「税務申告・納付期限の延長」③「国税の納付の猶予制度」④「地方税の猶予制度」⑤「欠損金の繰戻し還付」⑥「固定資産税等の軽減」⑦「厚生年金保険料等の猶予制度」⑧「国民健康保険、後期高齢者医療制度及び 介護保険の保険料(税)等の取扱いについて」⑧「電気・ガス料金の支払猶予等について」などが掲げられています。

ただし、税金や社会保険料を滞納していると新規の金融機関借入ができないなどの影響が出る可能性があるので注意が必要です。

私も、原則的な返済能力の考えを持ちながらも、将来の経営改善も踏まえながら、支援先の金融支援面では経済的マスクの考えを踏まえて適切に支援先に提言しながら対応したいと思います。

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