事業計画の意義 環境変化対応のための事業計画

事業計画の意義 環境変化対応のための事業計画

事業計画に意味はあるのか?

最近、好きな著述家の著書を読んでいて、「未来が不確実になって、あらゆる領域で計画の価値が目減りしている」という一節に出会いました。その書籍は、個人のキャリアビジョンについての内容でしたが、中小企業の経営の現場ではどうなのだろうかと考えてみました。

中小企業の現場でも、経営環境変化のスピードは速く、その通りだなと相槌を打つ部分と、実際に事業の現場で自身が策定を支援した経営改善計画(事業計画)のアクションプランと数値を実行支援する中で、明らかに事業計画に意味を感じている自分がいます。

そこで、中小企業支援の現場で、どのような場面で事業計画に意味があるのかについて振り返りました。

実行支援の現場で

私の実行支援の現場で、計画のアクションプランは少し変わっているものの、数値上は売上も利益も数年間、毎年全ての計画値をほぼ予定通り達成できている会社があります。

そこでは、毎月事業計画の数値を基に、定期的に経営者と試算表や予実管理表で数値差異を確認するとともに、計画実行フェーズで行うようになった生産日報を集計した生産月報で現場の製造原価につながるKPI数値を、現場責任者を交えて前年比で押さえながら、時には製品1本当たりの材料等の必要量の多寡までを月1回など定期的に議論しています。

また、アクションプランに従って、十年以上使用していない遊休設備を実際に除却することにより、現在の業務に合った在庫保管スペースを確保することができ、手元作業が増えて生産効率も向上しました。

それらの活動の過程で、予期しない社員退職による業務引継不備で上昇していた生産コストも早期発見し改善できました。

売上・利益面でも、既存品が実行段階で顧客要因で大幅な需要減少したものの、新規品で穴埋めできています。

結果、見た目は当初立てた事業計画をそのまま変えずに実行したような業績数値となっています。

もちろん安定した商流など計画以前からある事業基盤があってこそのものです。しかし、その裏ではアクションプランを実行に移し、環境変化に対応するために、事業計画の内容を都度ローリングし変化させながら、数値を振り返り目標数値に近づける活動をしています。

事業計画の意義

その事例を通して感じた事業計画の意義について以下のとおり考えてみました。 

基本方針を組織に浸透させる為の基本設計としての意義

方針を従業員・組織に浸透させるための基本設計の意義があります。、アクションプランについては、数値を押さえながら「なぜ、そのアクションを行う必要があるか」という実施内容の意義まで明確にすることにより、限られた経営資源の中で優先順位を付けて、今後何をしていけばよいのかを事前におおむね明らかにすることができます。

その結果、経営者も何から手を付ければよいか分かるようになり、個々の従業員の役割も明確になり、組織的に実際の行動に移りやすくなり実現可能性が高くなってきます。環境変化により計画の内容も変化する可能性は残しつつも、妥当な事業計画にはそういった事業の基本設計としての役割があります。

環境変化対応を進める為の基礎情報としての意義

そして、妥当性のある事業計画策定により、環境変化に対応し、組織的に計画をローリングしていくことが徐々にできる可能性が高くなってきます。

計画を実行していると、当然ながら経営環境変化が起きてきます。それは、景気動向を含む顧客要因による大幅な需要減少や、従業員退職などの内部環境変化などもあります。

その環境変化への対応として、その都度、当初立てた事業計画内容を振り返りながら、現在起きている事象を踏まえて、優先順位を付けて、限られた経営資源の中で、守るべきものを明確にし、今後の動向を予測しながら、事業計画を少しづつローリングし変化させていきます。

その際に重要になるのが、当初、事業計画を立てる時に明確にした事業の仕組みです。既存品を中心とした売上高、顧客別・製品別売上高と利益率、仕入れ先からの仕入れ状況、新規品の引き合いの状況、運営管理面、労務面など中味を細分化して発生する仕組みまで明確にしておくことで、実際に今起きている環境変化にどのように対応すべきかがわかりやすくなってきます。場合によっては、その内容をKPI化して定期に把握します。

それらの情報は、経営者の方が長年の事業の中で定性的・体感覚的にわかっているケースが多いです。しかし、見える化していないこともあり、そのままでは組織的には伝わりにくいケースも多く見られます。そして、それが方針の組織的な理解を阻害し実行を阻みます。

しかし、妥当性のある事業計画を立案する過程で、そういった定性的な内容を見える化することにより、環境変化対応方針もまた組織的に浸透させやすくなります。

そして、細分化して把握した仕組みを、現在の状況にどのように適応させていくのかを具体的に議論し考えられるようになります。

妥当性のある事業計画には、そういった経営環境変化対応を組織に浸透させる基礎情報としての意義があります。

具体的な数値目標としての意義

それらの取組み全般を支える必要な資金面の確保という、事業継続の基本要件を確保するためには、数値目標は必須です。妥当性のある数値計画は実現可能な資金収支を明確にします。そして、事業計画で立てた数値目標を意識してその目標に近づける努力をしていきます。その結果、経営環境変化に対応しながら必要資金を確保できるようになってきます。それが、安定的な事業継続につながってきます。

以上から、私は、中小企業経営では外部環境の変化が激しいから計画に意味はないと切り捨てるのは乱暴で、むしろ経営資源に限りがある中小企業だからこそ、現在の「ひと」「もの」「金」「情報」などの経営資源により実現できるアクションプランを立てるとともに、妥当性のある数値計画を立案することが重要だと考えています。

そして、それを意識しながら、時間軸を意識し優先順位を付けて事業を進めることにより、実際の環境変化に対応する具体的な行動につながってくるものと考えています。

私自身もそういった視点を大切に実行支援業務を行っていこうと思います。

この記事を書いた人

フェイスブックでコメントする