中小企業の賃上げと利益改善(賃上げの為に必要なこと)

中小企業の賃上げと利益改善(賃上げの為に必要なこと)

税制優遇や補助金の特別枠の要件に賃上げを加えるという記事が毎日の新聞の中で踊っています。それを読んでいて思ったことですが、賃上げがなぜ難しいのかという議論は紙面からは読み取れないことで、そこに違和感を感じながら、どう対応したらよいか考えていました。

全国の法人企業の65%は赤字で生産性は低い?

国税庁が2021年3月26日に公表した「国税庁統計法人税表」(2019年度)によると、赤字法人(欠損法人)は181万2332社で、全国の法人276万7336社のうち、赤字法人率は65.4%(前年度66.1%)だったそうです。すごい割合です。赤字ということは売上面か費用面に課題があり、利益を前提とした付加価値額は低くなり、生産性に課題がある可能性が高いと思われます。

付加価値額(およそ粗利益)増加が賃上げの原資

日本の法人の実に65%が赤字企業(コロナ前)ということは、付加価値額(およそ粗利益)も低いということです。利益を増やさないで、賃上げ、人件費だけ増やそうとすると、単純に利益を削り、赤字幅が大きくなってくるため、内部留保も増えにくくなり、賃上げも難しくなります。その為、賃上げの前提条件としては付加価値額が増加する利益増加が必要です。

賃上げの為に必要な利益改善の議論

賃上げには利益改善が必要です。利益改善のためには売上を上げるか費用を適正化する必要があります。それが有って初めて賃上げができるようになります。

①売上改善+費用削減→②利益改善→③賃上げ

という順序で進むと考えると、①をどうやって行うのかという議論とセットでないと利善は改善できず賃上げも進みません。ここを丁寧に議論して計画することが大切です。

利益改善を妨げている要因明確化と要因解決が大切

先日、経営者ヒアリングで、数年前、「賃上げ実施は厳しい」と言われていた経営者の方が、「賃上げは必要だが、海外に流れてしまった仕事の国内回帰が必要だ」というご意見に変わってきているのを聞きました。

このご発言を聞いて思ったことは、賃上げとサプライチェーン上の構造的な問題が結びついていたことです。

他にも半導体不足により製品出荷がほとんどできないで全く売り上げが立つ見込みがなく困っている会社が何社もあることを経営者の方々から聞きます。部材の価格上昇が立て続けに起こっていることも聞きます。これらは大きな外部要因です。

また、内部の問題として自社の情報不足や取組の努力不足もあるかもしれません。法人税を低減したいという考えで利益を減らしているのかもしれません。

それらの、「売上向上と費用削減」を妨げている内外の要因を知り、そこに対応していく必要があります。

賃上げに向けた課題解決はタッグを組んで進める事が必要

上記の利益向上を妨げる要因を乗り越えるために、外部の構造的な問題は国が政策的に支援する必要もあるでしょうし、個社の情報不足や取組不足は、それを補う情報や方法を専門家が伝えていく必要があります。金融面は金融機関の支援が必要です。

その上で、個社においては、着実に行動につなげることが大切です。また、支出を押さえながら設備等の実質的な資本装備率を上げる為に補助金の効果的な活用も必要です。
※補助金獲得が目的ではなく、生産性を上げることが目的

各企業の方々は日常の忙しさの中でも様々な知見を総合的に取り入れ新しい取組みをする努力がますます大切になってきます。その為には、関係機関皆がタッグ組んで協力してすすめることがこれまで以上に必要では?と思うようになってきました。

私も専門家としてその渦中にいることを自覚して、関与先企業の皆様と一緒に生産性向上支援に取り組んで賃上げに貢献していきたいと思います。

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