生産人口減少の中で迫られる賃上げ、待遇改善のための価格転嫁の検討
人口減少に伴い減少する生産人口
最近、ご支援先の中小企業で聞くのは新たな人がますます採用しにくくなっているという話です。それでデータを探していて、以下の資料を見つけました。
2015年を100として、今後65歳以上と75歳以上が30年でそれぞれお138と114になり、一方で、生産人口は70になる予測です。
生産人口は2025年でも2015年比で90と10%も低下します。
出生数・死亡数・合計特殊出生率の推移でみても次のとおりです。
出生数が年々減少していきますので、若年層の数もますます減少していきます。その結果、若手の採用が難しくなってくると予測されます。
若手採用で重要な待遇改善
実際に最近、ある長年の支援先で経営者と従業員の対話の場に参加した際に、若手社員が経営者に伝えていたこととして、「自分たちは(給与は下がらずに)目の前の休日数が増えて、将来の給与が上がる見込みが確りとあれば安心して働ける」と話しているのを聞きました。
働き方改革に向けた目の前の待遇改善と計画的な将来ビジョンを示しながら進めることが若手の採用や雇用維持にますます大切になってきています。
待遇改善の原資には利益が必要
私の周りの他の会社でも、働き方改革などへの対応として、休日数の増加を含む働き方の改善や給与の賃上げに取組む会社が増えてきました。
休日数については、東京近郊の会社の製造業の会社でも年間休日数を105日から120日に近づける会社や体制強化して労働時間を削減できるように取り組もうとしている会社もでています、また、新しく外国人の技能実習生や特定技能人材の採用を行う会社もますます増えてきました。(ただし、外国人技能実習生についても他の海外諸国との比較で候補者が減り始めているという情報も聞きます。)
それら全ての待遇改善には基本原資が必要です。その原資は利益になります。
賃上など待遇改善の原資確保のための価格転嫁などの経営改善が必要
内閣府が発行している令和3年度 年次経済財政報告のP72でも
「今もなお、企業の価格設定には粘着性が強くみられる。今後は、企業が人への投資や未来に向けた投資により稼ぐ力を高めながら、コスト上昇を適切に価格へ転嫁し、その果実を雇用拡大や賃上げに活かしていく「成長と分配の好循環」を実現していくことが求められる。」
と述べられています。
補助金などへのトライによる未来への投資、それも大事ですがその為の資金や時間がかかります。そこで、より即効性があるのは価格転嫁です。相手が了解してもらえれば即効果が出ます。
ただ、コスト上昇分のみを価格転嫁しても、利益は増えないので、賃上げの原資はできません。原資を創るためには利益を増やす必要があるので価格転嫁をしながら実質的な値上げを併せて行う必要があります。
先日、長年ご支援しているある経営者とその会社の今後の収支シミュレーションをして15~20%の値上げをしないと、将来的に厳しくなる可能性が高い試算が出たことから、その会社では覚悟を決めて材料価格高騰の価格転嫁に加えて値上げも入れて今月から20%近い値上げに踏み切りました。最近の賃上げや材料価格高騰の状勢や顧客とのそれまでの信頼関係もあり、全てのお客様に承諾して頂けているとのことでした。
業種や顧客との関係性によってはすぐには価格転嫁や値上げができないという会社もあると思います。ただし、将来的には機を見て実行していかなくては待遇改善できず体制維持できなくなってくる可能性が高まります。原資確保対策として価格転嫁と値上の実行も一方策になります。
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