固定費削減により必要売上高はそれ以上に減少する (家賃支援給付金や雇用調整助成金を受給する意味)

固定費削減により必要売上高はそれ以上に減少する (家賃支援給付金や雇用調整助成金を受給する意味)

コロナショックへの国の中小企業に対する支援策として、①家賃支援給付金や②雇用調整助成金といった費用補填策があります。①は売上高が一定の比率減少した事業者向けの「地代家賃の負担軽減」を目的とした支援策、②は売上高などの生産性指標が一定の比率低下し「経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に 休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当等の一部を助成」する制度です。

これらの制度を活用することにより支払いをした地代家賃や人件費の一部の補填を受けることができます。補填分は実質的に固定費が削減されたのと同じ効果をもたらします。

固定費と変動費とは?

そこで、固定費とは何かというところから書こうと思います。

固定費とは売上高の増減に関わらず固定的にかかってくる費用のことです。

決算書にある以下の費目が代表例としてあげられます。

(代表例)

・人件費

・地代家賃

・リース費用(機械設備用)

・利息(経常利益レベルで見る場合)

※元金返済まで含めて考える場合は元金まで入れて現場でお話しする場合もあります。

などが挙げられます

これらの費用は売上高が減少しても基本的には減少しません。その為、売上高が減少し、売上高に対して固定費が占める比率が高くなれば高くなるほど、利益も減少し、資金繰りもどんどんきつくなっていきます。

また、売上高の増減に影響を受けない固定費に対して、売上高の増減に伴い増減する費用は変動費と言います。代表例としては材料費や外注費、配送費用などが挙げられます。

損益分岐点売上高を押し上げる固定費

固定費と変動費が分かると損益分岐点売上高を算出できます。損益分岐点売上高を確保できていれば基本的には資金繰りも減少しにくくなります。

損益分岐点売上高を算出する数式は以下のとおりです。

損益分岐点売上高 = 固定費 /{(売上高−変動費)/売上高 }

この数式を図にすると以下のとおりです。

上図を見ていただくと、固定費のラインから変動費が上乗せされていくのがわかります。結果、固定費が上がると必要となる損益分岐点売上高を押し上げます。

損益分岐点売上高は削減した固定費以上に減少する

固定費削減の効果として、まず、最初に出てくる答えは資金繰り改善ということだと思います。

当然、費用を減らすので、資金繰りは改善します。

しかし、その効果として、経営者の方にお話ししていて、経営者の方が一番ほっとされるのは、固定費が削減すると変動費の比率に応じて、稼がないといけない損益分岐点売上高が削減した固定費以上に減少することです。

先ほどの数式の図のモデルで算出すると

削減前)固定費:100,000千円÷{(売上高:200,000千円-変動費100,000千円)÷売上高}

   =損益分岐点売上高 200,000千円

削減後)固定費:80,000千円÷{(売上高:200,000千円-変動費100,000千円)÷売上高}

   =損益分岐点売上高 160,000千円

  ※固定費削減額20,000千円の倍の損益分岐点売上高は40,000千円減少します。

固定費を削減すると稼ぐ必要がある売上高がそれ以上に低下します。これにより、コロナショックの中で売上高が上がりにくい状況の中において悪化しやすい資金繰りに耐える力が上がります。

まとめ(耐える力の向上)

実際に現場で資金繰り計画支援をさせていただくと売上高に占める固定費の多寡により売上高減少への資金繰り耐性が大きく違うことが分かります。

今回、国が出した支援策である①家賃支援給付金や②雇用調整助成金といった費用補填策を活用することにより固定費が補填されます。

繰り返しますが、固定費削減により、稼ぐ必要のある売上高がそれ以上に減少し、利益を維持しやすくなり、より資金繰りが悪化しにくくなり、耐える力が上がります。

私も関与させていただく会社様で必要に応じて上記支援策活用に向けて情報をお伝えするとともに、社会保険労務士などの他専門家におつなぎしながら、活用促進のお役に引き続き立ちたいと思います。

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