借入が怖いのはムダが発生している時(足元を見る重要性)

借入が怖いのはムダが発生している時(足元を見る重要性)

最近、自身の関与先で借入の件についてお話をすることが増えています。

そこで、経営者の方が不安になっていたので、借り入れた金額が減少せずに返済できればいくら多く借りても怖くないので、売上増えにくいのならば、固定費削減も含め日々の管理を確りとして収支を黒字で回しましょうと伝えました。

お話し伺ったときには、先が見えない中で、既に借り入れできる金額一杯借りて売上高に匹敵する大幅な負債を増やしていた会社もありました。

では、借入金を返済できなくなる怖いときとはどういう時なのかを整理してみました。

借入金が必要な理由

借入をする必要性や動機は資金が足りないからです。その資金使途といわれるものは一般的に次の2つです。

運転資金

取引が黒字で、売上が現金商売で売上計上と同時に近い形で現金が入金し、仕入れ資金はその後に支払うのであれば借り入れは必要ありません。仕入れ資金支払い後に手元に現金が残るからです。

しかし、売上入金と仕入れ支払のタイミングが同じことはほとんどありません。タイミング・サイトにズレが発生します。売上入金よりも仕入れ支払が先になると当然資金が足りなくなるケースが出てきます。

また、生産のリードタイムが長く、在庫が必要になることもあります。

加えて、その他毎月かかる人件費や家賃、管理費、利息などの固定費の支払いもあります。

そこで必要になるのが運転資金です。その運転資金を資金使途として借入が発生します。

設備資金

将来の新しい売上を上げるために、新しい設備投資が必要になることがあります。その際、自社に十分に資金があり、自己資金で投資ができれば問題ないですが、十分な自己資金が無ければ借り入れをする必要が出てきます。

これが設備資金です。設備投資に必要な自己資金が無ければ借り入れをして設備投資をする必要が出てきます。

設備投資は現在ある設備の更新であれば、現在の業務の生産性向上を図る場合は効果が事前に予測しやすいです。しかし、新規事業などの為の設備投資は将来発生する売上高の予測が難しいケースも多いです。

資金を減少させるムダの種類

借入した資金が減少するのはムダが発生した時です。以下、主要なムダの種類を整理しました。

赤字の発生

日々の資金繰りの中で、返済までを行ったうえで資金収支に赤字が発生すると、資金が減少していきます。この資金減少の要因は売上金額のボリュームが資金支出の額よりも少ない赤字の発生により起こります。赤字が発生すると単純に資金が減少しやすいです。利益に減価償却費を加えたキャッシュフローがプラスならばという話がありますが、究極的には後述するとおり、減価償却費を控除してプラスであることが望ましいです。売上と費用のボリュームを見て足りているかどうかを見ることが大切です。この中には、売上高の顧客などの要素別の確認や、費用面での外注管理などを含みます。

回収できない売掛金

売掛金が回収できない場合にも資金減少は起こります。売掛金先に注意をしておく必要があります。信用不安に対処する必要があるゆえんです。

出荷しない死蔵在庫

在庫を作ったものの、売上高に結びつかず死蔵化した在庫も製造にかかった資金を回収できず、資金減少につながります。これも、資金減少要因のムダの一つになります。営業と生産部門、仕入れ部門でムダが発生しにくい協力体制が必要です。

過剰な投資やムダな投資

投資した設備投資金額が売上や利益につながらなければムダが発生していることになります。設備は、定められた耐用年数に基づいて減価償却費を計上します。この減価償却費を適正にフルに計上している中で、設備が稼働して利益が出ていれば問題ないのです。

しかし、ムダや過大な設備投資が発生していると、稼働による売上だけでは、減価償却費含む費用がも大きく、利益が出なくなります。その為、業績が悪くなると減価償却費を削ることで表面的に黒字に見せる会社も出ます。そして、設備投資のムダが見えず、耐用年数を超えた設備利用が常態化します。

耐用年数を超えても設備が安定して稼働すれば利益が出やすくなりますが、常態化し、利益レベルが落ちると注意が必要です。そして、適時の設備更新が適時できるよう、生産性向上に支障が出ないように進める必要があります。

だから、適正な耐用年数に基づいて減価償却した上で利益が出るように常に利益向上の取組みの必要があります。減価償却費を控除して赤字ならば、ムダが発生している可能性を疑うことが大切です。

ムダが発生しない仕組みづくり(足元を見ること)の重要性

ムダを無くすためには、資金収支を黒字で回す必要があります。その為にはそれぞれのムダが発生しないための仕組みづくりが必要です。

  1. 収支管理:赤字が発生しないように収支を見える化して管理する。
  2. 売掛金管理:回収できない売掛金が発生しないように管理する。
  3. 在庫管理:出荷していないムダな在庫が無いか、入出庫や残高を管理する。
  4. 投資管理(売上高、利益につながっているかの設備の収支管理):投資した設備の稼働状況と減価償却費を賄えているか?
  5. 資金管理:①~④の結果、資金がプラスで回っているか?を管理する。

これらの管理を適正に行えば、設備更新をしても、理論上は資金は減少しないはずです。資金残高が減少している場合は、この内容を見て、どこが悪いのかを原因を見つけていけばよいです。そして、その原因を解決出来る対策をとればよいです。

ただし、限られた経営資源で運営している中小企業では上記の管理のどこかで上手くいっていないことが多いです。それらを見えるようにして、自覚して計画的に解消していくことが大切になってきます。

コロナ渦の今だからこそ足元を見る

コロナ渦による先の見えない今、借り入れをしてしのごうとする事も増えていると思います。今は、しのぐことが大切なので、それも大切な時期です。

しかし、借り入れた後は、先が見えないからこそ、ムダに資金を減少させないように足元を見ることも必要です。

そして、緊急事態宣言による需要消失から、宣言解除されて徐々に需要が戻ってくるのに合わせて、ムダが発生しないように日々管理していくことの重要性が増して、とても大切になってきているように思います。

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