中小企業の新領域進出について(中小企業等事業再構築事業の概要を見て)
新年らしく、新規事業領域への挑戦に関する新しい補助事業の概要を見ての雑感を書いてみます。当社も、昨年書いたブログにある通り、同規模での新事業分野進出に伴う詳細な事業計画策定から始まり、実行支援を現在も行っていることから感じたことを書きます。
中小企業等事業再構築促進事業について
(中小企業庁のホームページ)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/nyusatsu/2020/201216.pdf
12月に発表された経済産業省の第3次補正予算案の事業概要のPR資料を見ました。その中で『「新たな⽇常」の先取りによる成⻑戦略』があり、そこで、「中⼩企業等事業再構築促進事業」という新しい事業が発表されていました。
事業の目的は、「新規事業分野への進出等の新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の取組や、事業再編⼜はこれらの取組を通じた規模の拡⼤等、思い切った事業再構築に意欲を有する中⼩企業等の挑戦を⽀援」することです。今回の補正予算の目玉事業の一つと言われています。
【補助対象要件】
補助対象要件 | ①申請前の直近6カ⽉間のうち、売上⾼が低い3カ⽉の合計売上⾼が、コロナ以前の同3カ⽉の合計売上⾼と⽐較して10%以上減少している中⼩企業等。 ②⾃社の強みや経営資源(ヒト/モノ等)を活かしつつ、経産省が⽰す「事業再構築指針」に沿った事業計画を認定⽀援機関等と策定した中⼩企業等。 |
【補助金額・補助率】
補助金額 | 補助率 | |
中小企業(通常枠) | 100万円以上6000万円以下 | 2/3 |
中小企業(卒業枠)※400社限定 | 6000万円超 1億円以下 | 2/3 |
中堅企業(通常枠) | 1000万円以上8000万円以下 | 1/2 (4000万円超は1/3) |
中堅企業(グローバルV字回復枠)※100社限定 | 8000万円超 1億円以下 | 1/2 |
通称、モノづくり補助金と呼ばれる補助金の補助金額の上限が1000万円でしたから、本事業がいかに大きな規模の補助事業かが分かります。目玉事業と言われるのも分かります。
未知の分野進出に必要なこと(計画と事業DDの重要性)
新規事業分野は未知の分野への進出であるということです。未知の分野に進出することは、経営資源の補完も含め、現時点で存在しないものを創出することが必要です。その為の試行錯誤や準備が必要になります。そして、全体をプロジェクトと捉えて計画し、統合しながら、管理する事が求められます。
【必要な内容の検討例】
項目 | 内容 |
経営者の覚悟 | やりきる気持ちがあるか? |
技術開発・知的財産権 | 新しいノウハウなどによる技術開発の場合は知的財産権の取得検討 |
試作・生産方法 | 材料や生産方法などの調整 |
機械・設備 | 生産能力を見て必要な機械の調達とリードタイム 機械・設備は自社保有かどうか |
人員や労務管理 | 人員増や生産内容が変わる場合に、勤務体制などの労務面の検討が必要 |
事業所など拠点拡張 | 現在の拠点で製造や在庫スペースの確保等ができない場合 |
外注 | 必要な資源が社内にない場合の外注検討 |
運送 | 運送体制の確保 |
★売上想定(受注確度) | 上記費用を賄う受注が見込めるかどうか?発注見込みが分かる場合はその情報を把握したうえで、計画では固めに見積もる必要があります。特に業態転換など大きな売り上げ構造が変わるため、 |
収支構造の変化と数値計画 | 上記を全て踏まえた収支構造の変化を踏まえた数値計画 |
資金繰り(返済など) | 現在の資金状況の変化を含めた資金計画(堅めに)の策定 |
その他BCPなどリスク管理 | 災害時の対応などBCP検討 |
全体のスケジュール | 全体のスケジュールを連動させた管理 |
この中で特にカギを握るのが売上想定です。売上想定がずれると会社の収支全体にも影響を与える可能性があり、外部環境の変動に伴い資金繰りにも大きな影響が出て、会社の浮沈にもかかわる可能性があります。そのブレも非常に大きくなるリスクがあります。その為、売上想定を堅めに想定し見積もった上で確実にできる収支構造や資金計画を考える必要があります。本補助事業は中小、中堅企業にとって大きなチャンスであるとともに、リスクも大きいです。その為、やり切る気持ちが大切です。そして、上記のとおり想定して準備する必要がある項目は多岐にわたります。その為、それらを統合する事業計画が必要になります。発表されている本補助事業の概要の補助対象要件にもある通り、「経産省が⽰す「事業再構築指針」に沿った事業計画を認定⽀援機関等と策定」が必要となってきます。本事業はその影響が全社的に及ぶ可能性があり、その影響を見積もり、良い事業計画を立てるためには、現状把握が十分でない場合は、現状を把握するための事業DDも行いたいところです。
伴走型支援者の役割(実行支援の重要性)
当社は補助金申請業務のみは基本的にお受けしておらず、長期的な伴走型のご支援の中で、事業DDを行った事業の中身をよく分かっている会社様の補助金ご申請支援のみをお受けするに留めています。それは、確度が高い事業計画に繋がりにくいと思っているからです。そして、事業計画の規模が大きくなればなるほど、ブレを最小限にとどめるための実行段階での統合的な管理が重要で、それが計画の達成等の効果につながってきます。
中小企業は経営資源が十分ではない場合も多々あると思います。その際は、中長期的な伴走型の支援者が求められる局面もあるかと思います。その際は、ぜひ当社にご相談ください。お力になれるよう取り組みます。宜しくお願い致します。
フェイスブックでコメントする